臨床工学科
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近年の医療技術の進歩に伴い多種多様な医療機器が用いられ、医師・看護師以外に医療機器の操作と保守点検を行う専門職種として臨床工学技士が生まれました。当院の臨床工学科では令和6年12月現在、麻酔科部長を科長に臨床工学技士20名(うち常勤19名,嘱託職員1名)、技術・事務補助員2名で院内の医療機器管理・操作を行っています。
臨床工学技士とは
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臨床工学技士は1987年に制定された国家資格であり、生命を維持する機能が低下、停止した患者様に対し、人工呼吸器や人工心肺装置、人工透析装置などの生命維持管理装置を操作、および保守点検を行うことを業とする医療機器の専門医療職種です。
主な業務
〇医療機器管理業務
様々な分野で使用される医療機器を安全に使用できるよう、またその性能が維持できるように使用後の終業点検、計画的な定期点検を行います。さらに医療機器を一括管理することで効率的な運用ができるようにしています。
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〇呼吸療法業務
人工呼吸器の使用前後の保守管理や、人工呼吸器の導入から離脱までサポートを行い、安全に使用できるように努めています。また、呼吸ケアチーム(RST)の一員として呼吸療法の質向上に貢献しています。
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〇人工心肺業務
心臓手術の際、心臓や肺に代わる働きをする人工心肺装置の操作や管理を主に二人体制で行います。令和2年より小児を対象とした症例も開始され、術中の安全性の確保と有効性維持を徹底しています。
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〇手術支援ロボット立会い業務
平成28年11月より手術支援ロボットda Vinci Xi による手術が開始されました。年間約300症例で使用されており、臨床工学技士は機器の準備、開始前点検、症例中のトラブル対応などを行っています。
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〇腹腔鏡手術支援
腹腔鏡外科手術のスコープオペレーター(カメラ操作)を担当し、執刀医や介助医が術中操作に専念できるよう術中の視野を確保しています。
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〇術中神経モニタリング業務
術中モニタリングは、手術により障害される可能性のある脳機能および脳神経機能を術中に監視する手術支援システムの 1 つです。臨床工学技士は術中必要な機器の準備・セットアップを行い、手術が滞りなく進行できるように努めています。
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〇人工透析業務
体内に溜まった老廃物などを排泄あるいは代謝する機能が働かなくなった場合に人工透析という治療を行います。当院は透析室ベッド6床にて、看護師2名臨床工学技士2名が常駐しています。また、血液透析のほかに血漿交換療法(PE)、血漿吸着療法(PP)、腹水濾過濃縮再静注法(CART)などの血液浄化療法も行っています。
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〇高気圧酸素治療業務
高気圧(2気圧)の環境下で高濃度の酸素を吸入することで、血液中の酸素を増加させる治療法です。脳梗塞や腸閉塞などの様々な疾患を対象として行われます。臨床工学技士はその装置の操作、保守管理を行い安全な治療を提供できるように努めています。
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〇集中治療業務
集中治療室(ICU)では手術後や呼吸・循環・代謝機能に重篤な問題を抱える方を対象に人工呼吸器や血液浄化装置、補助循環装置などの操作・点検管理を行い、チーム医療の一員として集中的な治療に携わっています。迅速に業務が行えるよう、平成28年より臨床工学技士の日当直体制が開始されました。
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〇新生児集中治療室
臨床工学技士は人工呼吸器や保育器などの生命維持装置の保守管理を通して安全に機器が使用できる体制を構築しています。
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〇不整脈治療
徐脈・頻脈性不整脈に対する埋め込み型デバイスの症例立ち合い及び管理、また頻脈性不整脈に対して、ラボシステム・3Dマッピング・アブレーターを用いた高周波アブレーションを行います。(頻脈性不整脈の基となる部位を高周波通電し、異常な電気回路を焼灼します。)
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〇血管撮影室業務
虚血性心疾患治療・末梢血管疾患治療時に血管内超音波術(IVUS)を操作し、医師をサポートします。また、カテーテル治療中に容態が急変した場合は経皮的大動脈内バルーンパンピング術(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)等の補助循環装置や体外式ペースメーカーが迅速に導入できるよう備えています。
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〇器械出し業務
手術中に執刀医や介助医の指示に従い、メスなどの手術に必要な器械を渡す業務です。術式の流れや器械の特性を理解することで手術を安全かつ円滑に行えるよう努めています。
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〇内視鏡業務
検査前のスコープの点検に加え、検査中は施行医の指示のもとデバイスの受け渡しや操作を行う直接介助を行っています。患者様に負担の少ない検査ができるように貢献しています。
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臨床工学科の特徴
研修指導
既存の機器はもちろん新規購入した医療機器を安全に使用できるよう院内の職員を対象として研修・説明会を定期的に開催し、正しい使用法の普及に努めています。また、新入職者に対しても指導を行っています。
ME機器の管理形態
・中央管理
人工呼吸器、輸液・シリンジポンプなどは、必要時にいつでも使用できるように臨床工学技士により保守点検が済んだ状態でME機器管理室内に貸し出し用として保管されています。返却されたME機器はその都度に保守点検を行い、再び貸し出せる状態にしています。
・分散管理
機器の移動が困難などの理由で、院内各部署に常時配置されたものは、ME機器管理室から臨床工学技士が出向くことなどにより保守点検を行っています。
生命維持管理装置の操作と保守点検
血液浄化装置、補助循環装置、人工心肺装置などの生命維持管理装置の操作および保守点検は、高い専門知識と技術が要求されます。これらの業務は医師の指示の下に臨床工学技士が行っています。
資格 | 人員 | 取得(令和6年12月現在) |
---|---|---|
臨床工学技士 | 正職員 :19名 会計年度職員 : 1名 |
・臨床工学技士免許 |
技術・事務 |
2名 |
R6.12月現在